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「南海トラフ地震はいつ来るのか」

2024年8月8日、南海トラフ地震臨時情報「巨大地震注意」が発表されたのは記憶に新しい。著者はなぜ注意報が“空振り”に終わったのかを解き明かす。日本ではいつ大きな地震が起きてもおかしくないが、各人が「抗震力」を鍛えるよう説く。

* 南海トラフ地震はいつ来るのか(神沼 克伊 (著))
2024年8月8日16時42分頃、日向灘でM7.1の地震が発生した。同地域で発生したほぼ半世紀ぶりのM7クラスの大地震ではあったが、過去にも同じような地震は起きており、日向灘での定常的な地震活動と私は考えていた。ところが地震発生から2時間以上が経過した19時ごろ、気象庁から「巨大地震注意」が発表された。「想定震源域内で、南海トラフ沿いの巨大地震が発生する可能性がある」という推定であった。<
日向灘で起きたM7クラスの大地震と南海トラフ沿いで起きる巨大地震の関係を、気象庁の発表通りに理解できた日本国民がどのくらいいたかはわからないが、おそらくはほとんどの人は、急に「巨大地震発生」の可能性を知らされ、困惑したと思う。
発表の記者会見をした気象庁および関係の評価検討会の専門家の説明も、なんとなく歯切れが悪かった。正直過去に発生した日向灘地震と南海トラフ沿いの東海、東南海、南海地震の関連を指摘した研究がどの程度あったかは知らないが、その関係は地震予知・予測の面からはほとんど議論されていなかったと思う。発表されて以来1週間、少なくともNHKテレビの画面には常に「巨大地震注意」の6文字が示され続けた。
正直、私は専門家の多くが「既存のルートに従って「注意」を出したが、実際には巨大地震は発生しないだろう」と考えていたのではないかと、邪推していた。
発表された「注意」がそのような混乱を引き起こした原因は、「注意」の中に「地球の寿命」で起きる現象と、「人間の寿命」で起きる現象とが混在しているからである。いくら「巨大地震が起きる」「巨大地震が発生する」と叫んでも、地球の寿命での現象なら、会見で説明する関係者も「まあ起きないだろう」と思いながら話すので、その説明には迫力に欠ける。
一般にその違いが理解されていないので、「巨大地震注意」は「何か変」という疑問を多くの人が抱いたのであろう。そのパズルを解き、対策を示したのが本書である。
 
<【書評】米寿の地球物理学者、「抗震力」を指南:神沼克伊著『南海トラフ地震はいつ来るのか』>・2025.02.14・泉 宣道 ・https://www.nippon.com/ja/japan-topics/bg900558/

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