* 年金「最終警告」 (講談社現代新書・島澤 諭 (著))
日本中に激震が走った「老後は2000万円が必要」という金融庁の報告書は、残念ながら全くの現実である。そして若者や現役世代を中心に年金制度そのものに不信感が募っている。年金の支払額に世代間格差があるのは現前たる事実であり、その財源も20年から30年後には枯渇することが予測されている。賦課方式である現在の年金制度はネズミ講と同じ仕組みであり、若者が高齢者を助けるものだが、少子高齢化により、若者の負担は増えるばかりである。年金制度の大幅な見直しが求められている。本書はその改革への提言の書である。
<低い年金 増える生活保護の高齢者>
生活保護を受ける高齢者が増えています。年金制度は高齢者の生活を支える役割を果たせているか。 高齢者の貧困問題や年金制度が専門の立命館大学教授の鎮目真人さんと考えました。【聞き手・須藤孝】
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高齢者の貧困 ――困窮する高齢者が増えています。
鎮目氏 生活保護を受ける高齢者世帯は年々増加しています。すでに90万世帯を超え、100万世帯に迫っています。
また、生活保護を受給する世帯の中では高齢者世帯は5割を超えています。
生活保護を受ける高齢者は今後も増えるでしょう。年金の「最低生活保障」という役割が問われています。
年金制度が維持されたとしても、(基本的な生活費を保障する)生活保護制度の生活扶助費にも満たない給付しか受けられないなら、年金制度がなんのためにあるのか、国民は理解できなくなります。
――高齢者は今後も増えますから、深刻な問題です。
◆政府も問題は認識していて、基礎年金の底上げを考えています。厚生年金との財政調整で基礎年金を強化しようとしています。これは必要です。
国民年金の納付期間を40年から45年に延ばす案もあります。しかし、こちらは、保険料の免除者が増えるだけで、給付の向上は見込めない可能性があります。また、未納者は対象外ですから、関係がありません。
低年金に打つ手はあるか
2023年8月21日・鎮目真人・立命館大学教授
https://mainichi.jp/premier/politics/articles/20230818/pol/00m/010/005000c