「「おふくろの味」とは、料理の枠をこえて「現代史としての意味を持っている」。起源をさかのぼればその出現は、「都市にとっての思春期」ともいうべき高度経済成長期だった。集団就職や大学進学で、故郷の味から切り離され、都会に集められた若者たちの「膨大な数の胃袋」が「味を通した郷愁」をもとめて渦巻いた。急激な社会構造の変化のなかでひとびとは「生きる拠りどころ」を渇望し、それぞれの故郷を想起する装置として呼ばれるようになったのが、すなわち「おふくろの味」だったのだ。」
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* 「おふくろの味」幻想~誰が郷愁の味をつくったのか (光文社新書・湯澤 規子 (著))
なぜ「おふくろの味」は男性にとってはノスタルジーになり、女性にとっては恋や喧嘩の導火線となり得るのか。誰もが一度は聞いたことがあっても、正体不明の「味」をめぐる男女の眼差しや世代のすれ違いはどこから来るのか。本書はその理由を、個人の事情や嗜好というよりもむしろ、社会や時代との関連から解き明かしていく。「おふくろの味」の歴史をさかのぼりつつ、近年の「お母さん食堂」事件からポテサラ論争までを考察する意欲作。
◎目次
プロローグ――「味」から描かれる世界
第一章 「おふくろの味」をめぐる三つの謎
第二章 都市がおふくろの味を発見する――味覚を通じた「場所」への愛着
第三章 農村がおふくろの味を再編する――「場所性」をつなぎとめる味という資源
第四章 家族がおふくろの味に囚われる――「幻想家族」の食卓と味の神話
第五章 メディアがおふくろの味を攪乱する――「おふくろの味」という時空
エピローグ――一皿に交錯する「おふくろの味」の現代史