<読売社説:「ファスト映画 無断編集は違法だと心得よ」>
「動画投稿サイトを運営する事業者の責任も大きい。」、違法コンテンツ、無過失であっても共同責任を追及できるように法改正を。
* 映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形 (光文社新書・稲田 豊史 (著))
現代社会のパンドラの箱を開ける!
なぜ映画や映像を早送り再生しながら観る人がいるのか――。なんのために? それで作品を味わったといえるのか? 著者の大きな違和感と疑問から始まった取材は、やがてそうせざるを得ない切実さがこの社会を覆っているという事実に突き当たる。一体何がそうした視聴スタイルを生んだのか? いま映像や出版コンテンツはどのように受容されているのか? あまりに巨大すぎる消費社会の実態をあぶり出す意欲作。
<読売社説:「ファスト映画 無断編集は違法だと心得よ」>
他人の著作物を勝手に使って利益を得ることは制作者の収益基盤を破壊する違法行為である。手を染めれば、巨額の損害賠償を求められる重大さを認識すべきだ。
映画を10分程度に無断で編集した「ファスト映画」の投稿者3人に対し、東宝など13社が著作権を侵害されたとして5億円の損害賠償を求める裁判を起こした。・・・
違法コンテンツの作成者の多くが発信元を特定されぬよう外国に拠点を置いている。海外での情報開示手続きは時間や費用を要し、運営者の特定が難しいためだ。今回のように刑事処分につなげられたのは例外的だといえる。
日本の著作権者や業界団体は、関係国との間で司法手続きの情報共有を進めるべきだ。国内でも、啓発活動や学校での著作権教育を充実させる必要がある。
動画投稿サイトを運営する事業者の責任も大きい。著作権者による削除要求や情報開示請求には迅速に対応しなければならない。違法コンテンツへの広告出稿を止め、収入源を断つといった取り組みの強化が大切だ。
「映画鑑賞に時間をかけたくない」と考える人もいるが、ファスト映画を見ることは犯罪を助長する行為だ。制作者は全編を見てもらう前提で作品に精魂を込めていることを忘れてはならない。 2022/05/31
https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20220530-OYT1T50178/