<毎日社説:「世界的な木材価格高騰 持続的林業を探る契機に」>
いつまでもこの世界的な木材価格高騰が続くとの保証はないが、いずれにせよ脱炭素、小資源国の日本では、森林大国の気候風土を最大限に活用する知恵と工夫が必要である。そして林業や農業、あるいは漁業は地方活性化の切り札だ。
<毎日社説:「世界的な木材価格高騰 持続的林業を探る契機に」>
新型コロナウイルス禍の中、コンテナ輸送の滞留などが原因で起きた木材価格の世界的な高騰「ウッドショック」が長期化している。
日銀の統計によると、4月の木材・木製品の価格は、2015年平均の1・7倍に達し、値上がりが続く。ウクライナ侵攻に伴う経済制裁でロシア産木材の一部が禁輸となり、先行きはさらに不透明だ。住宅建設などへの影響が懸念される。
一方で、国内森林資源は豊かさを増している。規模を示す「森林蓄積量」は1966年に18・9億立方メートルだったのが、20年には54・1億立方メートルと3倍に増えた。国内需要の4分の3を毎年の増加分で賄える計算だ。
高度経済成長期に植林された人工林の半数が樹齢50年を超えて伐採期を迎えている。放置すれば山林荒廃につながる。有効活用を図るべきだ。・・・
伐採で未造林地が広がっては元も子もない。植林、伐採、再造林というサイクルを確立し、建材としての利用後もバイオマス発電に使うなど好循環を生み出したい。
木材は成長過程で二酸化炭素を吸収し、伐採後も炭素を貯蔵している。森林の新陳代謝を進めることは脱炭素社会にも貢献する。
24年度からは住民税に年1000円を上乗せする形で森林環境税が導入される。税収をどう活用するかの議論も進めるべきだ。
国内資源を最大限に活用する工夫を重ねながら、森林大国の新たな担い手を育成したい。 2022/5/22・https://mainichi.jp/articles/20220522/ddm/005/070/124000c