改革を目指した「政界一の喧嘩屋」はなぜ総理の座を追われたのか――。安倍・麻生との確執から、河野・小泉との本当の関係まで、6年あまり担当記者を務めた担当記者だからこそ書ける菅義偉の実像。
* 孤独の宰相 菅義偉とは何者だったのか(柳沢 高志 (著))
【目次】
第1章 〝令和おじさん〟の誕生
2019年4月、新元号「令和」発表を契機に菅フィーバーが巻き起こる。官房長官として異例の訪米を成功させた菅は、7月の参院選で「新たな自民の顔」となり、自公圧勝の原動力となる。菅は完全に有卦に入っていた――。
第2章 辞任ドミノの衝撃
2019年後半、菅側近の新閣僚が「政治とカネ」をめぐる疑惑で相次いで辞任し、総理主催の「桜を見る会」問題を追及するマスコミの矛先は安倍から菅に向かい始めた。そして、菅の懐刀の補佐官にも女性スキャンダルが発覚する――。
第3章 安倍総理との亀裂
2020年に入ると、コロナ対応をめぐり安倍側近の官邸官僚が重用され始め、菅は安倍への不信感を強めていく。菅は官房長官退任も視野に入れ始めるが、官邸官僚の施策がことごとく失敗し、菅は再び官邸内で存在感を取り戻す――。
第4章 第99代総理大臣
2020年9月、安倍の電撃辞任を受けて菅は念願の総理に就任する。地方議員出身の〝たたき上げ〟総理の誕生は世論に歓迎されて好スタートを切るが、学術会議問題、GoToトラベルの迷走などで支持率はジリジリと下がっていった――。
第5章 コロナとの苦闘
2021年前半、度重なる感染拡大で緊急事態宣言の発出、延長を繰り返した「後手後手」の対応は大きな批判に晒された。「人流」の抑制を重視する分科会の専門家たちと菅の認識のズレが露見する中、菅はワクチン接種に望みをつなげる――。
第6章 なぜ総理の言葉は届かなかったのか
記者の質問に真正面から答えない、政策決定の過程を詳しく説明しない、同じ答弁を繰り返す。〝鉄壁のガースー〟と称された官房長官時代のスタイルを貫いたことが災いし、菅は「指導力のない総理」というレッテルを貼られていく――。
第7章 苛烈な〝菅おろし〟
7月の都議選で惨敗し、緊急事態宣言下で開催された五輪中も感染拡大は収まらなかった。菅が描いていた「8月人事、9月解散」という極秘日程は幻となり、自民党内では総裁選をにらんだ動きが活発化し、〝菅おろし〟の風が吹き始めた――。
第8章 最後の10日間
横浜市長選敗北の翌日、衆院選で自民の議席激減を予測する調査結果が判明。党内に動揺が走る中、岸田は「二階切り」という乾坤一擲の勝負に出る。焦った菅は総裁選前の人事と解散を模索するが、安倍・麻生によってすでに外堀は埋められていた――。
<永田町で話題の菅義偉氏の内幕暴露本に見る「政治報道の落とし穴」>
内容は読み応えあり。オフレコ発言の扱い、政治家と記者の間合いをどう考えるか
2022年01月10日・星浩 政治ジャーナリスト
https://webronza.asahi.com/politics/articles/2022010700001.html